サービスロボットが活用されている代表的な業種〜『農業業界の動向』について
農業や漁業などの第一次産業と呼ばれる領域も高齢化や後継者不足などに悩まされている領域の1つです。肉体的に負担のかかる作業も多くあり、サービスロボットによる作業効率化や作業の代替が必要とされる領域でもあります。「農業」分野でロボットが期待される理由はいくつかあり、(1)1次産業の高齢化が進行、深刻な労働力不足に直面、(2)海外需要が高まり農業総産出額9兆円超の市場に成長しているが作り手が不足している、(3)スマート農業による超省力・高品質 生産を実現への期待、などが挙げられる。
(1)高齢化が進行、深刻な労働力不足に直面
日本の農業分野における高齢化と労働力不足は深刻だ。国の統計によると、基幹的農業従事者は、174万人。なんと、従事者の平均年齢は、66.5歳となっている。日本国の平均年齢は46歳で、その平均より20歳も年齢が高い。50歳未満での従事者は約10%に留まり、このままだと、深刻な労働力不足が起きることは避けられない状況という危機的な状況になりつつあります。
(2)海外需要も高まり農業総産出額9兆円超
農林水産省の資料によると、長期的に農業生産額は減少を続けていたものの、この数年は一転上昇に転じている。2016年度は、16年ぶりに9兆円台の回復を遂げた。人口減、高齢化に伴い内需は減少方向の予想となっているが、世界を見ると人口は増え続ける見込みとなっている。国内需要から世界需要へシフトすることが、農業の成長のひとつのカギを言える。
(3)スマート農業による超省力・高品質 生産を実現への期待
3つめは、労働力不足に対する生産性向上が最大の問題だ。政府・農業団体などはこの問題に対して各種施策を行っている。その中でロボットを主軸に置いた課題対策が、「スマート農業」です。農業分野の機械化は古くより進められています。トラクターや田植え機、コンバインなどの農業機械は高度経済成長期には積極的に活用されるようになりました。これまでのところ、それらの農業機械は人手を介することが前提となっていました。しかし、近年では、人工知能を搭載することによって、サービスロボットとして更なる自動化が推進されています。無人で場内を自動走行(ハンドル操作、発進・停止、作業機制御を自動化)し、使用者は、自動走行するロボット農機を場内や周辺から常時監視し、危険の判断、非常時の操作を実施できる状態を目指し、1人で2台を操作可能(有人-無人協調システム)できるロボットの開発が進められています。
トラクターや田植え機などの自動運転はすでに一般販売が始まっています。 畑や田んぼといった環境は、周囲に危険物が少なく、自動化が容易なように感じます。しかし、実は、道路と異なり、目印の少ない畑や田んぼといった環境は、自律移動のロボットにとって、難しい環境といえます。道路には、車線や歩道との境界といった目印が多く、カメラやセンサなどを用いてそれらの目印を認識し、走行位置を調整することができます。しかし、周囲に何もない場合には、ロボットにとっては、進むための手がかりが少ないため、まっすぐ進むことが困難になるのです。現在では、GPSなどの測位技術の発達によって、そのような難しい環境でも誤差を少なくして自動運転することができるようになりました。これまで機械化されていなかった場所でもサービスロボットの活用が始まっています。 前述した野菜の収穫ロボットも実用化に向けた取組が進められています。また、収穫時に収穫した作物を入れるかごを追従ロボットに搭載することによって、常に収穫かごを人の作業に追従させ、効率化するといったサービスロボットの活用も行われています。しかし日本の農家は比較的小規模農家が多く高額なロボットの投資回収が難しく、多品種が栽培されるなどにより、栽培する農作物による高さや間隔、実の大きさや色も多様であるためロボットの開発に多額のコストがかかってしまい実用的なレベルにならない事が多く存在します。また、日本特有の問題として、日本の消費者は農作物の見た目へのこだわりが強く、少しの傷も許さない傾向があるため、例えば、収穫ロボットだとスピーディーかつ高精度な動き、といった両立が難しい要件がロボットに求められる。そのためメーカーとユーザーの間のシーズとニーズのミスマッチが発生するのも課題です。例えば一部の農業ロボットでは、アーム部分のアタッチメントを付け替えることにより多様な作物に対応できる汎用性を強みにしているものの、ユーザーからはアタッチメントの付け替えが面倒などの声も聞かれています。農業の現場へのロボット普及にはまだ障壁があるのが実情です。