サービスロボットが活用されている代表的な業種〜『物流業界の動向』について
近年、通販の利用者が増えたことにより、配送数が増え物流需要は増す一方とされています。また2020年に流行した新型コロナウイルスの影響もあり、外出せずとも必要なものが手に入るECサイトを利用する人が増えているといわれています。国土交通省の発表によると、EC市場は全体で約18兆円規模に上っています。さらにEC市場規模の拡大に伴い、5年間で宅配便の取扱件数は約6.7億個増加し、年間45億個に迫る勢いです。このように、個人宅への小口配送の需要は年々増加しています。
しかし反対に、物流業界の労働人口は減少し続けています。日本は少子高齢化が進んでおり、労働者人口が減少し働き手不足により、スムーズな物流が滞り配送に遅れが生じます。このような現状を受け、物流自動化による業務効率化などが求められています。アマゾンや楽天を始めとするeコマースの発展は、反対に佐川急便やヤマト運輸など通販商品を届ける宅配便業社もそれに伴い多忙になってきました。
宅配業界は急激に成長している通販業界の増え続ける配送量に追いつけるよう努力はしているのですが、このまま通販業界の規模が順調に拡大し続けると宅配業者が対応しきれなくなるかもしれないのです。その将来訪れるかもしれない宅配業者の危機のことを「宅配クライシス」と呼び、現在対策が練られています。物流の効率化の喫緊の課題となり、社会的に問題視されています。 再配達などによる非効率を改善するための置き配や宅配ボックスの設置なども積極的に取り組まれていますが、抜本的な改革が求められている業界の1つです。更に、限界集落と呼ばれるような高齢者の数が50%を超えるような地域では、日用品の買い出しが困難となる買物難民が発生し、都市と地方間を結ぶ宅配へのニーズが更に高まっています。このような状況下で、サービスロボットやドローンによる宅配の自動化が進められています。
ドローンの配送やサービスロボットによる自動配送はアメリカや中国で先進的に取り組まれています。特に、コロナ禍で急速にその市場が拡大しました。ロックダウンした街中で日用品の配送業務を自動化したり医療物資の配送にドローンを利用したりといった利用方法が各所で報道されました。日本は、法律による規制を受け、実証実験などを経ながら慎重に取り組みが進められています。 離島へのドローンを用いた配送や公道での配送実証の取組は徐々に増えてきているところです。
物流の拠点となる倉庫内でもサービスロボット必要とされています。 理由のひとつは物流センターの立地です。膨大な量の在庫を管理できる物流センターを建てるためには広いスペースが必要であり、物流センターは土地の安い郊外に建てられることも少なくありません。結果、都市部に住む求職者にとっては「通いにくい職場」ということになり、敬遠されることも多いのです。
さらに、物流センターは商品を出荷する拠点という性質上、郊外の中でも国道沿いなどの交通の便がよい場所に建てられます。そのため、近隣にショッピングモールなどができることも多く、他の職場の求人に負けてしまう、ということも起こるのです。また、物流センターでの仕事には、物の持ち運びやピッキングなどの肉体労働が多いことも、人手を集めにくい理由の1つです。
そのような状況にも関わらず、物流業界の人材需要は高まる一方です。ECサイトの利用者にとって、注文した当日や翌日の配達はもはや当たり前のサービスです。そのうえ、昨今の新型コロナウィルス感染症の影響に伴い、これまでEC化を進めてこなかった企業や業界が続々と新規参入することとなり、特にEC出荷に対応している物流センターでは、従来の2倍・3倍の物量が動いているということも珍しくありません。結果、物流倉庫には、突発的な物量の増加・波動に対応できるよう、業務量をコントロールすることも要求されているのです。
慢性的な人手不足と物流業界への需要増が今後も継続する課題であることを考えると、物流システム全体の見直しが必要だといえるでしょう。人の力に頼らずとも正確でスピーディな物流業務を行うために、自動化・省力化を図ることが重要です。
このような方針でシステムの改革を行っていくうえで、重要なカギとなるのが物流ロボットです。
EC需要の高まりから、配送先ごとに異なる商材を準備するなど「個配」が進んでいる状況では、細やかな作業・判断の全てをロボットが担うことは困難です。そこで、人が関わらなければいけない作業は人が行い、ロボットが代替できる「探す」「歩く」などの作業や工数削減効果の高い作業はロボットが行う、といった協働が必要となります。
このように、物流ロボットとは「人を無くす=完全無人化」ではなく、人が働く場所で、人が担っていた作業を受け持ち、人と一緒に働くことで、省人化・省力化を図ることを役割としています。AGVと呼ばれる無人搬送車は、90年代前後からすでに実用化されています。 ルートテープや、目印を施設内に貼付することで誘導する方法から、近年ではレーザセンサなどを利用することで誘導する方法も登場してきています。自社倉庫内なので、レイアウトをサービスロボットに合わせやすいため、公共空間よりも導入が進んでいます。アマゾンがピッキングロボットの競技会を開くなど、物流でのサービスロボットの活用範囲はますます拡大しています。